言葉の意味・語源・由来

聲の読み方や意味とは?声との違いや変化した理由をチェック!

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聲の形

聲の形

ベストセラーになった話題のコミックで、映画でも観客動員数160万人を突破したアニメ作品。

聲の形

このタイトルの中の『』は、どう読むのでしょうか?

 

これは、『こえ』と読みます。

 

『聲』は、『声』という漢字の昔の文字(旧字)なのです。

だから読み方も意味も同じです。

でも、なんだか『聲』という文字には重みがありますよね。

 

漢字は、中国で作りだされ、日本に伝えられました。

『聲』という漢字も中国からやってきたのです。

 

『聲』が『声』に変えられたのは戦後のことです。

それはアメリカをはじめとした連合国軍の占領政策の一つでした。

「日本の将来のために、難しい漢字は止めて簡単な略字を当てる」

という方針で『当用漢字』という新字体ができたのです。

日本の漢字にとって、大きな歴史の転換点でした。

 

ここでは

  • 『聲』の読み方や意味。
  • 『声』との違い。
  • 『聲』から『声』に変化していった理由。

などを、漢字の歴史と共に探っていきます。

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『聲』の読み方と意味は『声』と同じ?

まず読み方です。

『聲』という読み方は『声』と同じです。

音読み:『セイ』『ショウ』

訓読み:『こえ』『こわ』

となります。

『声』は、小学校二年から『常用漢字』として教科書に出てきますね。

『聲』について文字の形から語源を探って見た

という字を分解してみましょう。

まず左上の"声"は、

『つるされた石の打楽器の形』

を示しています。

右上の"殳"は、

『手に木製の棒を持っている人の形』

をあらわします。

下の"耳"は、ずばり、

『人の耳の象形文字』

なのです。

 

これらを合わせると

つるした楽器を棒で叩いて、音をだれかの耳に届ける

となります。

これが『聲』という漢字の始まり・語源です。

 

『聲』は、人と人とのコミュニケーションの始まりの形を示しています。

『素朴な楽器を使い、自分の身体全部を用いて音を出して気持ちを表現し、相手に伝えた』

という意味になります。

 

中国から伝わった『聲』という漢字は、そのあと時代と共に、様々な意味に使われていきます。

『聲』『声』の言葉の意味と使い方まとめ

人や動物が発声器官から出す音 → 『声を出す』『肉声』

ものがぶつかったり、振動して立てる音・ひびき → 『鐘の声』『銃声』

言葉の発し方、アクセント → 『優しい声』『声音(こわね)』

虫が羽根や足をこすり合わせて出す音 → 『すずむしの声』

季節や時期が近づく気配 → 『秋の声が聞こえる』

人々の意見、うわさ、評判 → 『庶民の声』『読者の声』

音楽の区切り、音の高低やリズム → 『声部』

…広辞苑や大辞林などから、意味を調べてまとめてみました。

 

『声』の言葉の意味は幅が広くて、驚きですね。

『名声を手に入れる』『声なき声』とか。

『天の声だ』『神の声が聞こえる』など。

いろいろな使い方があります。

 

漢字の危機!『聲』は『声』から『koe』に?

日本が敗戦した太平洋戦争直後のことです。

当時、日本は連合国によって占領されていました。

アメリカを中心とした占領軍の司令部では…。

これからの日本の占領政策をどのようにするか

激しい議論が交わされていました。

その中に日本語という言葉の難しさの問題があったのです。

  • 日本の漢字は多すぎて、書き方も複雑で、覚えるのが難しい。
  • 日本人の識字率(文字の読み書きの能力)が上がらない。
  • このままでは教育にも支障を来(きた)すだろう。
  • 戦後の復興を図り、民主化を図って行くために新しい教育政策が必要だ。

思い切って漢字を廃止してローマ字にしてはどうか?

という乱暴な議論にもなりました。

その結果、日常に使える漢字の数を減らし、字体も簡便にされた『当用漢字』が発表されました。

これが内閣告示されて、発効したのは戦後間もない1946年(昭和21年)のことです。

当用』とは、

いずれ漢字を廃止するまでの当分の間

という意味でした。

この時に告示されたのが新しい字体の漢字『新字』です。

新字の数は1850字でした。

旧字は使用することまで禁じられたのです。

その中で、『聲』も簡略化された『声』という字で世の中に衆知徹底されました。

そのとき、日本の漢字は絶滅の危機を迎えるのでした。

 

旧字がどんな新字に変わったのか見てみよう

旧字→新字

『聲』→『声』

『戰』→『戦』

『學』→『学』

『龜』→『亀』

いかがでしょうか。

新字はずいぶん簡単になりました。

とくに旧字の『學』は難しそうです。

『龜』はとても覚えきれませんね。

 

むかしは、このような旧字体ですべての漢字ができていたのです。

筆順にも決まりがあって、書道も盛んでした。

当時の人にとって、筆を使って書くことは日常の生活に必要な素養(そよう)の一つだったのです。

 

昔の漢字をよく見ると、その難しさ故(ゆえ)の固有の歴史が読み取れます。

一つ一つの字を書き、読むことを通じて、言葉の持つ意味を生き生きと伝え続けていったのだと思われます。

蟬の聲

蟬の聲

上図は、

『閑(しずか)さや岩にしみ入る蟬の聲』

松尾芭蕉(奥の細道)の有名な言葉ですね。

『聲』という旧字体が入ると、表現に深みが出るように感じませんか?

『蟬の聲』が暑い夏の日差しを切り裂くように、力強く浮かび上がって見えます。

 

識字率の全国調査で驚異の結果が出た!

その後、事態は変わり、漢字の撤廃という計画は中止となります。

その理由は、識字率について行われた全国調査の驚くべき結果でした。

1948年(昭和23年)全国の15才から64才の男女17000人を対象に行われた文部省の調査報告です。

交通事情が悪く、コンピューターもない戦後の混乱の中、人海戦術で行われたにもかかわらず、とても高度な調査として総司令部に評価されたものです。

日本人の識字率は驚くほど高く、読み書きができない人の割合は人口のわずか2.1%

それは世界でも最高のレベルでした。

「漢字が難しいから識字率の低下を招くのだ」

という連合軍司令部の漢字廃止の論拠(ろんきょ)は完全に否定された格好となったのです。

これで日本人の優秀さが証明され、当用漢字以外の漢字は使ってはならない制限も廃止されました。

ここから旧字も使用できるようになります。

 

そして、1981年(昭和56年)に『当用漢字』は『常用漢字』に引き継がれます。

常用漢字』とは一般の社会生活で使われる漢字使用の目安

となるものです。

漢字は95字追加されて1945字に増やされ、内閣告示されました。

現在では『常用漢字』は2010年にも改訂されて、合計2136字に増えました。

常用漢字以外の漢字は『表外漢字』または『常用外漢字』といいます。

『聲』は、常用外漢字として生き残りました。

 

現在、小学校と中学校で学ぶ漢字はこの『常用漢字』の2136字です。

小学校では学年ごとにおぼえる字が決まっていて、六年間で1006字。

中学校では1130字を学びます。

繰り返しますが『声』という新字は、小学校二年の教科書に出てきます。

こうして日本の漢字は生き残ったのです。

 

『聲』が生まれた原点を深掘りしてみた

『聲』という文字の始まりを知りたくて、詳しく調べ直してみました。

新しい発見をしました。

漢文学者の白川静先生は、自著『常用図解』(2003年平凡社)の冒頭部分でこう述べています。

漢字の理解には、漢字の形だけでなくて、その形が意味する内容についての理解が必要である。

 

その『常用図解』の中にある『声』『聲』の項目で大事なことを見つけました。

『聲』の上部左が表しているのは、普通の古い打楽器ではなかったのです。

声』は、もともと『神を呼び込むための楽器』だったのです。

聲』とは神を呼ぶための祈りの音であり・響きであった』

と書いてあります。

このように、『聲』とは神聖な言葉だったのです。

後になってはじめて『聲』は、人の『こえ』の意味に用いられることになります。

 

さらに『常用字解』で『聲』の下部にある『耳』を調べてみました。

『耳』は『聴くことを司(つかさど)るもの』とあって…。

『聴』とは、

『耳と目と心を要素とする字である』

と続けています。

 

たしかに、『聴』という字は、耳と横に並んだ二つの目と、心でできています。

これらを重ね合わせると

声は耳で聞いて、相手の目を見て、心で受け止める

となります。

『声』は、耳で聞くだけでなく、心で受け止めるべきものだったようですね。

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まとめ

『聲』の読み方と意味。

『声』との違いや変化の歴史探訪。

いかがでしたでしょうか?

旧字体の『聲』と新字体の『声』には、読み方と意味の違いはありません。

しかし漢字の成り立ちや変遷の歴史を見てみますと

古い漢字に込められた意味が浮かび上がってきます。

 

『声』のはじまりは神への祈りであり

耳で聴き、相手の目を見て、心で受け止める

神聖なものだったのです。

 

どうでしょう?

『声の形』ではなく『聲の形』。

あえて古い漢字を使った、作者の意図に少し近づいたような気持ちがしませんか?

たまには普段使っている漢字の他に、昔使っていた旧字体の意味・歴史も覗いてあげてくださいね。

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Tossin

猫メロのフリー・ライターです。もと広告マンでイベントプロデューサー。学生時代は工学部でSF短編書いて小遣いを稼いでいました。父親が自然科学者、兄貴が作家というややこしい家系のおかげで雑学十分に育ちました。いまは飛鳥時代にタイムスリップして、奈良あたりを徘徊しております。Tossin=突進!元気の出る記事をお届けします。

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