このような会話を聞いたことはないでしょうか。
「あの人はちょっと左寄りだね」
「あの新聞は右だからね」
この場合の左・右とは、
政治的な意味でいう左翼・右翼
のことです。
自分はどちらの立場でもないと考えていると、具体的にどういった思想を持っていたら左翼・右翼なのか、いまいちよくわかりませんよね。
時には両者に対して、とても怖いイメージすら持つこともあります。
そこで今回は、
政治的な意味で使われる左翼と右翼の基本的な違いなどについて、わかりやすく解説
していきます。
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左翼と右翼の意味の違いを解説
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いきなり現代の日本(もしくは世界)において、
「○○という思想を持っていれば、左翼(もしくは右翼)だ!」
と言い切ることは難しいことです。
そこで、まずは左翼と右翼の基本的な意味とその違いについて説明します。
- 左翼:急進的・革新的な考え(をもった人)
- 右翼:保守的・国粋的な考え(をもった人)
というのが、左翼と右翼の根本的な違いです。
右翼が伝統や習慣を重んじる立場であるのに対し、左翼はそれらを変えようとする立場であるということです。
意外とシンプルな違いではないでしょうか。

ベルリンの壁
たとえば、『日本の天皇制を維持しようと考える立場は右翼』、『天皇制は不要であると考える立場は左翼』と表現できます。
もしかしたら左翼と聞いて、社会主義や共産主義を思い浮かべたかもしれません。
共産主義とは、簡単に説明すると貧富の差のない社会を作ろうという考えのことで、社会主義はそこに至るまでの一つの過程です。
いずれも、現在、世界中に広がった経済体制である資本主義を批判する立場です。
そのため資本主義を維持しようとする考えならば右翼、社会主義・共産主義を目指しているのならば左翼といえます。
他にも、『男は男らしく』のような従来の性役割を重視する考え方は右翼、そういった価値観から脱却しようという考え方は左翼といえるでしょう。
このように、
今ある制度や価値観を守ろうという考えを右翼、それを批判して新しいものを作ろうとする考えを左翼
と呼ぶのです。
左翼と右翼の語源について
ではなぜ、政治的な立場の違いを『左翼』『右翼』と表現するのでしょうか。
それは、フランス革命後に開かれた議会にまで、さかのぼることができます。
この時、議長から見て左側には急進派の議員が、右側には穏健派の議員が座っていたことが左翼と右翼の由来です。
フランス革命とは
そもそもフランス革命とは、18世紀後半にフランスで起こった、絶対王政を崩壊させた革命のことです。
『自由・平等・博愛』をスローガンとして掲げ、フランス社会を根底から変革しました。
そして1792年には、初の男子普通選挙が行われます。
そこで成立した議会において、議長の左側には国王ルイ16世の処刑を求めたジャコバン派が、右側には国王を守ろうとしたジロンド派が議席を占めました。
議場が翼のように見えた
さらに議場は扇型をしていて、
まるで鳥が翼を広げたように見えた
そうです。
そこから急進派(ジャコバン派)を左翼、穏健派(ジロンド派)を右翼というようになったといいます。
これ以降、フランス革命の理念を徹底する勢力を左翼、それに対する勢力を右翼と区別するようになりました。
このように現在では世界中に広まった『左翼』『右翼』という分け方。
もとはフランス議会で対立する党派の席と議場の形がその由来だったのです。
もしジャコバン派が議長の右側に、ジロンド派が左側に座っていたら、左翼と右翼はまったく別の意味になっていたでしょうね。
極左や極右とはどういった立場?危険なの?
さて、左翼と右翼の違いはイメージできたと思います。
では、極左や極右という言葉を耳にしたことはないでしょうか。
- 極左とは極端な左翼思想を持つ人や団体のこと
- 極右とは極端な右翼思想を持つ人や団体のこと
を指します。
このように書くと、なにか危険な人たちを想像するかもしれません。
しかし、極端とはあくまでも相対的な表現です。
それぞれの政治的思想を持った人たちと比べた結果、極端な思想を持っているということを意味しています。
『相対的』の具体例1
例えば、先ほどのフランス革命後のフランス議会の話に戻ります。
革命が進んでいくと、次第に穏健派が淘汰され、議会は急進派で占められるようになりました。
するとおもしろいことに、その急進派の中でも穏健な考え方を持つ人間は、議長から見て右側の議席に着いたそうです。
もとは左翼であったはずの人が、今度は右翼になったということです。
ということは、元々右翼であった人は極右と表現することもできますよね。
このように左翼・右翼、極左・極右という区別は、時代によるということです。
『相対的』の具体例2
さらに、こんなこともいえます。
マリーヌ・ル・ペン氏が率いるフランスの政党・国民戦線(国民連合に改称予定)は、日本国内では「極右」政党だと伝えられています。
こちらの党は反移民を掲げていますが、具体的には
1万人程度しか受け入れたくない
という主張をしていたのです。
これに対して、日本は移民を正式に受け入れるということはしていませんよね。
フランスの極右政党は移民を1万人までは受け入れると表明したのに対して、日本はゼロなのです。
ということはこの点について、日本はさらに右翼の国と表現することができますよね。
このように左翼・右翼の区別は時代だけでなく、国によっても異なるといえます。
すなわち極左・極右と呼ばれている人たちが、いつの時代も・どこの国においても、危険な活動を行っているとは限らないということです。
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おわりに
今回は、左翼・右翼の意味の違いから、極左・極右といった立場とはどういったものかを解説しました。
- 左翼は現状を変えようとする急進的な思想
- 右翼は現状を維持しようとする保守的な思想
のことです。
左翼・右翼といった政治的立場の違いは、フランス革命後のフランス議会における席の位置が由来でした。
この区別が世界に広まりましたが、実際には時代や国によって変わる相対的なものでもあります。
もし今のあなたがどちらでもないと思っていても、気がついたら極左や極右になっている可能性もあるわけです。