みなさんは、『下町ボブスレー』という言葉を聞いたことがありますか?
平昌五輪のボブスレー競技において、ジャマイカチームが、急遽ラトビア製のソリを使うことを決めたと発表していましたよね。
その際に、下町ボブスレーがドタキャンされ、損賠賠償請求も辞さないと騒動が勃発。
もちろん、身勝手な理由でドタキャンしたなら損害賠償も分かります。
しかし、はたして本当にジャマイカがそんな不義理をしていたのか?
そこで本記事では、下町ボブスレーを開発した会社やソリの性能、ソリが使われなかった本当の理由を紹介していきたいと思います。
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下町ボブスレーを手がけた会社とは?

下町ボブスレー
日本のものづくりの技術力を世界にアピールしようと、立ち上げられた下町ボブスレー。
残念ながら平昌五輪でジャマイカチームと契約していたものの、ドタキャンされ使用されず、
損害賠償請求の構えをとる
として報道されましたよね。
ネット上ではジャマイカチームの不義理とバッシング!
ニュース番組でも、さんざん取り上げられていたので、みなさんも知っていることでしょう。
下町ボブスレーのドタキャン騒動の経緯
2017年12月に行われたボブスレーのワールドカップで、輸送機関によるストライキによって、ジャマイカはソリをラトビア製のものに変更せざるを得ない事態が勃発!
しかし、ラトビア製のソリに変更すると、下町ボブスレーよりも結果が上回ってしまい、平昌五輪もラトビア製に変更することとなった…。
つまり、下町ボブスレーにケチがつけられてしまう結果となったのです。
『日本のものづくりが凄い』
と世界で注目されているのに、この結果はなんだか悲しい話です。
下町ボブスレーを手がけた会社…
それにしても、下町ボブスレーはあくまでプロジェクトの名称に過ぎません。
実際に、どの会社が中心となって下町ボブスレーを立ち上げていたのでしょうか。
いろいろ調べてみると、どうやら
公益財団法人の大田区産業振興協会
が中心となり、この下町ボブスレーを手がけた事がわかりました。
大田区産業振興協会が、
『大田区や日本の技術がPRできるのではないか?』
と考え、ボブスレーに注目して、『下町ボブスレー』として手がけたのがきっかけです。
もちろん、大田区産業振興協会だけで開発できるほど簡単な代物ではありません。
開発にはコストだってかかるので、100数企業も協力企業を募っています。
例えば、
- 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製のボディ製作:東レ・カーボンマジック株式会社
- 空力解析:株式会社ソフトウエアクレイドル
といったように、各パーツごと担当企業・組織が協力して下町ボブスレーは完成されているとのこと。
国の肝いり政策で挑んだ結末
そして、民間企業だけではなく日本のアピールとして、安倍晋三内閣の肝いり政策の一つとして、
3年間にわたって上限2000万円の補助金
も出資しているのです。
それだけ力を入れた肝いり政策が、完全否定されているからこそ、ジャマイカチームに損害賠償6,800万円を請求するほど激怒したのでしょう。
最終的には、この損害賠償は取り下げられました。
しかし一部では、ある理由から、損害賠償を求めたことすら恥ずかしいとさえ言われています。
正直、日本のものづくりが世界で注目されている中、多数の企業まで巻き込んでこの結果。
日本人として悲しいですよね。
だから、ショックを受けて憤りを感じる気持ちは分からなくはありません。
ただ、
ジャマイカにドタキャンされた
ということが、全てを物語っているのではないかという気がするのが、正直な気持ちですね。
下町ボブスレー(ソリ)の性能は?
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さて、下町ボブスレーが平昌五輪の直前にドタキャンされた一件です。
その是非についてはさておき、下町ボブスレーのソリの性能は、ラトビア製のソリに勝っていたのか?
その疑問の解決のために、筆者もいろいろ調べてみると、
ジャマイカがラトビア製のソリを使用したのは妥当だったこと
が判明しました。
先程もお話しした通り、ラトビア製のソリがドイツでのワールドカップで結果を出しているわけですが、それはたまたまではなく、性能の差が明らかに出た結果だったのです
歴然とした下町ボブスレーとラトビア製ソリの差
下町ボブスレーではトップとの差が1秒以上出てしまい、ラトビア製では1秒以内だった…。
もちろん、選手の力もあるでしょうし、ソリだけの力とは言いません。
ただ、この結果が全てを物語っているのは明白です。
さらに、下町ボブスレーには致命的な欠点があり、
ジャマイカ・ボブスレー連盟の機体検査に不合格
だったことも判明。
つまり、性能が悪いどころか、ジャマイカの要望すらクリアできず、最悪、機体検査にパスできず、試合に出られなかった可能性もあったのです。
ジャマイカチームの不安が下町ボブスレーを遠ざけた?
ジャマイカのボブスレーチームは相当不安だったはずです。
そもそも、オリンピックは、ワールドカップと異なり、4年に1度しか出場できない大会です。
それも誰もが出場できるわけではありません。
国の代表として選ばれた一部の限られた選手だけが予選をクリアした上で初めて出場できるのです。
つまり、トップ選手でさえ、4年に1度必ず出場できる保証はなく、一生に1度しか出場できない可能性もあるわけ…。
そんな中で、欠陥品として基準もパスできないかもしれないソリを誰が使いたいと思うのでしょうか…。
下町ボブスレーサイドは、最終的に検査をパスする自信はあると言い切っています。
しかし、2度の検査で不合格となっているのは事実。
そんなソリをジャマイカが使いたいと思うわけがありませんよね。
たしかにストライキによるソリの変更がなければ、そのまま下町ボブスレーが採用されていたかもしれません。
ただ、事実は急遽ラトビア製のソリを使うこととなりました。
そのことが不安をいだいていたジャマイカのボブスレーチームの救いとなったのだと思います。
下町ボブスレーが使われなかったもう一つの問題
さて、下町ボブスレーが使われなかった理由は、性能の差が明らかに生じていたためです。
しかし、問題は他にもあり、それ以上に深刻でした。
そもそも、この下町ボブスレーは、ドラマ『下町ロケット』になぞらえて名付けられたものと思われますが、その名をも冒涜しています。
下町ロケットが好評だった理由
元々、このドラマ『下町ロケット』は、作家・池井戸潤先生の原作をベースにドラマ化したものです。
阿部寛さん演じる主人公・佃航平が、自社工場の社長となり、さまざまな困難に立ち向かいながら、ロケット開発や心臓移植の部品を開発していく…。
そこには、ものづくりの厳しさが、たくさん詰まっていました。
同時に困難な条件をクリアし、素晴らしい技術を盛り込み、作られた製品が完成した時の感動もたくさん詰まっています。
だから、下町ロケットは、多くの視聴者に感動を与えたドラマとして好評だったのです。
下町ロケットと下町ボブスレーの決定的違い
ところが現実社会に誕生した下町ボブスレーは全く別物でした。
これは、
ソチ五輪のときに、日本が下町ボブスレーを使わなかった理由
でもあります。
実は、日本のボブスレーチームは、下町ボブスレーが手がけたソリに満足できず、いろいろ注文をつけていたそうです。
下町ボブスレーにこだわりがあるように、ボブスレー協会にも当然こだわりがあります。
しかし、なぜか下町ボブスレーは顧客であるはずのボブスレー協会の要望を無視。
強引に、自分たちの下町ボブスレーを押し通そうとしたのです。
ボブスレー協会が見せたこだわりは、相手チームにソリの構造をパクられてしまわないように、フレームの色を黒にしてほしいといったもの…。
それを下町ボブスレーは、
『情熱の赤でなければいけない』
とこだわりを見せて却下したのです。
さすがに、日本のボブスレー協会も落胆してしまいました。
結果として、下町ボブスレーは採用を見送られることとなったそうです。
つまり、下町ボブスレーの技術はそれなりにあったとしても、使う側の意見を積極的に聞かないおごりがあったというのです。
下町ボブスレーは下町ロケットでいうライバル企業そのもの…
これって、下町ロケットで言うところの、佃工業のライバル企業がやっていたことに匹敵する事案ですよね。
ドラマでは、結局、佃工業の製品に劣り、ライバル企業は敗北していったわけで、その結果が、下町ボブスレーにもそのまま反映されていたと言えるでしょう。
そして、平昌五輪での、ジャマイカチームに対する騒動も、彼らはジャマイカチームに歩み寄ろうとはしていなかったというのです。
その結果として、ラトビア製のソリよりも性能が下回るソリを作ってしまった現象となっています。
国の補助資金の行方も微妙…
もちろん、下町ボブスレーに関わる全ての企業に2000万円(×3年分)が補助されたわけではありません。
ある報道によると、安倍晋三政権の手心が加えられてしまったという話さえ出ているのです。
下町ボブスレーは相手を思いやれない自己自慢の塊
そんな、押し売りのようなソリを誰が使いたいのでしょうか?
本当に、今回の下町ボブスレーは、ただ自分たちのPRのことだけを考え、日本のものづくりに対して、泥を塗った企業の結末を招いただけに過ぎない…。
そう言える気がしてならないのが、正直なところです。
もちろん、まだまだ筆者の知らない事実がたくさん眠っているのかもしれません。
これだけで、全てと断定して語るのは時期尚早かもしれません。
ただ、少なくとも下町ボブスレーは結果さえ出していません。
そして、大田区がPRのために、マイナー競技であるボブスレー(しかもジャマイカチーム)に目をつけ、下町ボブスレーを提案していた…。
そこに、本当にジャマイカチームへの思いやりがあったとは、とても思えないです。
しかも、ジャマイカチームに拒否されるやいなや、損害賠償なんて話まで持ち出した…。
少しずつ、この騒動の全体像が見えてくることで、『下町』と名乗っているこのボブスレー開発チームに強い憤りを感じています。
『PRに力を入れてはダメ』とは言いませんし、『ものづくりにこだわりを持つな』とは言いません。
ただ、依頼主の要望を無視してまでやることじゃありませんし、大事なのは、依頼主が喜ぶことです。
ただの自慢のための、ものづくりでは意味がありませんし、自己都合だけの開発は破綻するに決まっています。
そのことは、ドラマ『下町ロケット』を観れば一目瞭然です。
さらに続きがあった下町ボブスレーの問題…
これだけでも十分悲しく憤りを感じるのですが、実は、この下町ボブスレーには、さらに続きがありました。
それは、平昌五輪の開催後にジャマイカチームのコーチが辞任してしまい、ラトビア製のソリが使えないかもしれないと報じられたときのことです。
普通なら、下町ボブスレー側としては、まずジャマイカチームの心配をするはずです。
その上で、さらに性能を上げた下町ボブスレーを提供してみては?と提案するのが妥当な判断のはず…。
ところが、彼らの取った行動は全く違っていたのです。
下町ボブスレーのTwitterアカウントは、選手の心配さえせず、チャンスとばかりに、そのニュースをリツイート…。
つまり、選手そっちのけで宣伝していたのです。
これには、ただ愕然としました。
「こんなことが日本のものづくりにあって良いことなのか?」
そんな感情がふつふつと湧いてきますね。
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まとめ
下町ボブスレーが、平昌五輪でジャマイカチームにドタキャンされ、使用されなくなった問題。
この一件は、当初はジャマイカチームのモラルに問題があるように思われました。
しかし、フタを開けてみれば、明らかな性能の差だけでなく、一つ間違えば、機体そのものが検査にパスできなかった問題さえあったのです。
さらに、明らかにPRにジャマイカチームを利用しようとしていた痕跡までも見え、いかに日本のものづくりの酷さを露呈したか…。
本当に『下町』の恥に値する結果ですし、二度とこのような下町ボブスレーが誕生しないことを願うばかりですね。